家族に裏切られ全てを奪われた私は、辺境地に住む強くて心優しい彼に出逢い、沢山の愛と優しさに触れながら失ったモノを取り戻す
 出航してから暫く、見張り兵たちの動きに気を付けながらエリスを酒樽から外へ出すと、積み荷の一番奥に身を隠すよう指示をする。

「ここは港に着くまで誰も近寄らないから安心しろ。俺はこれからルビナの女王に近付いて情報を得る」
「近付いてなんて、気付かれたりしませんか?」
「問題無い。向こうは俺の事など知らないからな。あくまでも見張り兵の一人に過ぎない」
「ですが……」
「大丈夫だ、お前こそ、見つからないよう気を付けてくれ。本当ならずっと樽の中に居る方が安全なんだが、流石に一日過ごすのは無理だろう」
「はい……分かっています。ギルバートさんも、お気を付けて」

 いつまでもこの場で話をしていられない事もあり、後ろ髪引かれる思いでギルバートを送り出したエリスは積み荷の奥の狭いスペースに身を隠すように座り込んだ。

 ギルバートはというと、アフロディーテたちが甲板に出ている事を聞きつけすぐ近くまでやって来ると、出来る限り側を陣取り、彼女たちの口元に注視する。

 離れている場所からでも相手の話す内容を読み取れるよう、読唇術を身に付けているギルバート。

 アフロディーテも周りに人が居るか否かは警戒しているもののまさか唇の動きを読まれているとは夢にも思わず、リリナやシューベルトたちと共に会話を続けていく。

 初めは大した内容では無く世間話にも似たどうでもいい話だったのだが、暫くすると突如エリスの話題が上がってきた。
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