家族に裏切られ全てを奪われた私は、辺境地に住む強くて心優しい彼に出逢い、沢山の愛と優しさに触れながら失ったモノを取り戻す
「……エリス様、お食事でございます」
「ありがとう、今はちょっと気分が優れないから、後で頂くわ」
「……左様でございますか。食欲が無くても、せめて、スープだけは……きちんと召し上がって下さいね」
「ええ、そうさせてもらうわ」

 昼間の話を聞いてからというもの何も手につかず、食欲すら湧いてこないエリスはメイドの返事に頷きはしたもののやはり食事をする気にはならず、スープだけでもと言っていたメイドの言葉を思い出し、何か言われる事を面倒に感じた彼女はスープを二度程口にして食事を終えた。

 そして、結局何一つ考えが纏まらぬまま深夜を迎え、何だか急な睡魔に襲われたエリスはいつの間にかベッドの上でうたた寝をしてしまう。

 皆が寝静まったであろう丑三つ時、ふと、何かの気配を感じたエリスは暗闇の中で、薄ら瞳を開ける。

 すると、部屋の中に人が侵入して来ているような気配を感じた彼女は勢い良く身体を起こした。

「だ、誰!?」

 恐怖から大声を上げると、すぐ側に居るはずの気配が動きを止める。

 月が雲に翳っていたせいで部屋の中が暗かったものの、その翳りが徐々に晴れて薄らと月の光が窓から差し込んで来た次の瞬間、何かが弧を描くようにエリスの視界に映りこんで来ると同時に、

「きゃあ!?」

 鋭い痛みが身体中を駆け巡った。

「な、んなの……?」

 そして、完全に月の光が部屋の中を照らした事で、全身黒づくめの怪しい男が剣を手にして自分のすぐ目の前に立っている事と、今の痛みが右腕に剣の刃先が掠って切られた事だと知った。
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