リシェル・ベッカーが消えた日〜破滅と後悔はすぐそこに〜
魔法や魔道具が存在するなら当然、魔導書も存在する。そしてリシェルが勤めていた王立図書館には、国内で最も多くの魔導書を収容されていた。
「魔導書を読み解いた彼女は『言葉とリンクさせて過去を思い出させる』魔法を、長い年月をかけてお前達に与えてきた。……魔法を持たないが、魔力を全く持ち合わせていないわけではない。彼女は少ない魔力をすべてこの復讐に捧げた。自分の人生を投げ売ってもでも、成し遂げようとしたんだ」
テオは持っていた魔草を握り潰して、怒りで震える手を抑えこんだ。モノクル越しに映るオレンジ色の瞳からは殺気を感じる。
(この気迫……やはり只者ではない!)
怒りがあらわになっても依然冷静を保ち、鋭い眼光で周囲を抑え込むその赤い瞳――もし、フランクが思い当たった人物が本当なら、フランクは敵に回してはいけない人物に楯突いたことになる。
「あなたは、まさか――」
「私はただのしがない文官です。何もやましいことなんてありませんよ」
震える声色のフランクを遮って、テオは対面の席に戻ると、モノクルを外した。先程までオレンジだった瞳は、鮮やかな赤い瞳に変わる。
「さぁ、あなたが逃げてきた分、じっくり話をお伺いしましょう。――罪は重いぞ。覚悟しろ」