リシェル・ベッカーが消えた日〜破滅と後悔はすぐそこに〜
「フランクの情報によって闇商会の取引場所を抑えることができてはいるものの、まだまだ安心はできない。引き続き頼んだよ」
「承知いたしました」
それから、いくつか細々とした報告や相談をこなしていると、近衛兵士が入ってきた。
「殿下、グランヴィル王国よりテオバルド王子殿下がお見えになりました」
「ありがとう。通してくれ。私も向かう」
机の上のさっと片付けると、ルーカスは執務室を後にする。
テオバルドとは隣国との懸け橋のため、何度も顔を合わせていることもあって友人のような存在である。さらに今日の訪問ではもう一人、来客がいると聞いていたので、ルーカスは内心楽しみにしていたのだ。
応接の間ではテオバルドと、亜麻色のショートカットの女性がソファに座って待っていた。女性は翡翠の瞳を持ち、濃い緑のドレスにテオバルドの瞳に似たガーネットのブローチを身につけていた。
ルーカスが入ってきたことに気付いた二人が立とうとするのを、ルーカスは制した。そしてダニエルを含む従者たちを外に出し、三人だけになった空間で切り出した。
「久しいな、テオ。そして……リシェル」