リシェル・ベッカーが消えた日〜破滅と後悔はすぐそこに〜
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――時は遡り今から六年前、ルーカス達が学園を卒業した時のこと。
『両親の敵を取りたいの。知恵だけでもいい、力を貸して欲しい』
そう言い出したリシェルの瞳には涙が浮かんでいた。
卒業後、ルーカスは王太子として本格的に公務に参加、テオ・グランドとして隣国から留学していたテオバルドは帰国し、第一王子である兄を支えることが決まっていた。
二人にとって、リシェルの才能は男女問わず尊敬し、一友人として高く評価していた。そんな彼女が復讐をしたいと言い出した時は、一体何事かと首を傾げたものだ。
自身が十一歳の頃に起きた両親の死亡事故について当初からずっと疑念を抱いていたリシェルは、自分が調べた根拠を並べ、二人に懇切丁寧に説明した。
しかし、あくまで可能性でしかない。ルーカスもテオバルドも、すべてを鵜吞みにはできなかった。
『リシェル、力を貸して欲しいというのは、私達の立場をわかったうえで聞いているのかい?』
ルーカスは王太子、テオバルドにいたっては隣国の王族だ。たかが貴族のいざこざに巻き込むなんて迷惑もいいところである。
もちろん、テオバルドも難色を示していた。友人として手を貸したい気持ちは山々だが、一個人の感情だけで動くにはリスクが高すぎる。
すると、リシェルは新たに書類を差し出した。自宅のフランクの書斎で見つけたもので、近隣の諸国で調査が続いている闇商会との取引内容が記載されている。王家にとっては喉から手が出るほど欲しい情報だ。
『おそらくもっと出てくると思います。私の復讐に協力してくれるなら、闇商会の情報はすべてお渡しします』
『しかし……』
『……リシェル嬢、これはベッカー家を終わらせる行為だ。それでもいいのか?』
テオバルドの問いにリシェルは迷いなく頷いた。
『私は、両親が大切にしてきたベッカー家をこれ以上汚されるなんて耐えられない。たとえ嫌われ者になろうと、私の手で終わらせることになっても、伯父様の好きにはさせない。どんなことだってこなしてみせるわ』