奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 いちいちこんな会話をしなくてもいいのだが、本来の立場を考えれば、トーマスがこちらを訪問してのやりとりになる。
 シャリーンが、パイ目当てに訪問していると見せかけることで、わざわざ商会を訪れる理由を作っているのだ。シャリーンの食い意地が張っていると周囲には思われてしまうが、それでもいいらしい。

「では、秘書と相談して日時を決めますね! 料理人にも、レモンパイをお願いしておきます」
「頼んだわ」

 すぐに欲しい情報が集まるわけではないから、四人で顔を合わせる機会があった時に、集まった情報を精査している。
 魔道具師ギルドを出たエリュシアは、トーマス商会の馬車に乗り込んだ。
 将来有望な魔道具師――いや、今ではそれなりに名を知られるようになった魔道具師か――である『エリア』の周囲は、厳重に警戒されている。
 師匠のもとを訪れるのに、護衛兼御者が馬車を出してくれるのもその表われだ。こうやって魔道具職人を囲い込むのは珍しい話ではない。

(……それにしても、行方不明者がずいぶん増えたわよね)

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