奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 ただ、ディーデリックの噂が聞こえるところでひっそりと生きていけたら。エリュシアの頭の中にあったのはそれだけ。
 平凡な魔道具師として一生を終えるのだろうと思っていたのに。
 こうして巻き戻ってから、一度目の人生では知らなかったことをいろいろと知るようになった。
 母の敵を取って、そして――。

(今度は、ディーデリック様と生きていけるかしら)

 今はまだ想像もできないけれど、すべてが終わったら新たな人生を生きることは許されるだろうか。

「……しばらくは、ディーデリック様からの連絡を待つしかないのよね」

 エリュシアをここに送り届けたトーマスは、商いを済ませたら帝国に戻ることになっている。
 ディーデリックが、『王女への求婚』のためにこの国を訪問するまでは、あと二週間ほどと予想している。
 先んじてこの国に戻ったのは、『求婚の対象者』がザフィーラだけではなく、エリュシアでもあるという実績を作るため。
 ディーデリックは、華々しく登場するに違いない。ザフィーラは、凛々しい彼を見たらどんな顔をするのだろう。
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