奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 魔力……? 一応、エリュシアにも魔力はある。だが、育つとはどういうことだ。

「せいぜいありがたいと思うのだな。お前のおかげで、俺の命はまだまだ続くというわけだ」

 一国の皇帝としてはあり得ないほど凄みを利かせた笑みを浮かべたオーディラスは、エリュシアの胸に刺さった短剣を一気に引き抜く。

(やめて! 痛い! やめて!)

 苦しい息の中必死に繰り返すが、言葉にはならなかった。
 気が付いた時には、エリュシアは身体から引き離されていた。いや、エリュシアの心が身体から引き離されたと言うべきだろうか。
 そして今度はぎゅぎゅっと狭いところに押し込められる。
 冷たい、暗い、痛い――聞こえてくるのは、一度もエリュシアを顧みなかった夫の笑い声だけ。

(……どうして?)

 自分の意識が失われていくのを感じながら、エリュシアは心の中でつぶやいた。
 人は、死の間際に一生を一瞬にして振り返るのだと聞いたことがある。そして今、エリュシアはまさに短い生涯を振り返っていた。
 父は正妃の他、たくさんの側妃を抱えていた。だが、正妃が敵視したのはエリュシアの母だけだった。
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