奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 ピンクの寝具に白いカーテン。鏡台の上には、化粧品の瓶が並んでいる。

(あれは夢……? ここは、私……私の、部屋……?)

 それにしては、あまりにも生々しかった。三年にわたった寂しい生活も、夫に貫かれた胸の痛みも。

(……いいえ、帝国に嫁いだのは夢じゃない)

 床を踏みしめている足裏から伝わる感触も、本物のようだ。
 首筋に手を伸ばす。そこに鎖の感触があるのを確認してから、デスクに向かった。
 足が床に触れる感触を確かめるように、一歩一歩ゆっくりと。
 首にかけていた鍵の束を取り出して、そのうちひとつを選んで鍵穴に差し込む。鍵を回して引き出しを開けた。

(……日記帳、ここで途切れてる)

 最後の日付は、エリュシアが十五歳になった翌日だった。毎日日記をつけているから、今は十五歳になった翌々日ということか。

(そんなわけ、ないわよね)

 ため息をついて、ベッドに戻る。
 きっと、もう一度横になったら――あの冷たい離宮で目を覚ますのだろう。
 胸を刺されたのも夢だ。全部、夢。
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