<掌編>緑のカミサマ
屋上に、1枚の折り紙が落ちていた。
緑色。誰がこんなものを__。
流石に偶然、風でここまで流されることはないだろう。
昼休み。なんとなく教室が居づらくて、急いで食事を済ませた。
暇つぶしに来ただけで、特に用事もない。昼寝をするほど眠くもない。
「あー。僕なにしてんだろ…。」
しばらく呆然としていた。ため息をついたり、転がって空を仰いでみたり…。
…………何となく、その折り紙を取って、三角に折った。
空気を入れて、広げる。
次に、一番難しい手順。
あれを綺麗にできる人なんているのだろうか。
ぐっと左右の羽を引っ張る。
手のひらに、ペコペコ羽が不安定な鶴。
……ちょっとだけ、満足した。
達成感、というほど大きなものではないけど。
…折り鶴の折り方をいつ、どこで知ったのかはわからない。
それでも、みんな知ってる。
だから____
校舎の屋上から乗り出す。
そこだけ、絵のように見えた。
ボロボロの骨組みだけの、丸い半球。
空に、飛行機が飛んでいた。
ずっと昔、だけど思ったよりもずっと最近、あの半球にとんでもないものが落とされたのだ。
緑の落とし物とはわけがちがう。
でも、僕にはこの緑の羽ばたく鳥がある。
きっと、僕だけじゃない。
この世界中の人が。
大きく息を吐いた。
緑の平和のカミサマを一つ残して、僕は校舎の階段へと走り出した。