<掌編>緑のカミサマ













屋上に、1枚の折り紙が落ちていた。






























緑色。誰がこんなものを__。








流石に偶然、風でここまで流されることはないだろう。












































昼休み。なんとなく教室が居づらくて、急いで食事を済ませた。










暇つぶしに来ただけで、特に用事もない。昼寝をするほど眠くもない。













「あー。僕なにしてんだろ…。」





しばらく呆然としていた。ため息をついたり、転がって空を仰いでみたり…。





































…………何となく、その折り紙を取って、三角に折った。














空気を入れて、広げる。



















次に、一番難しい手順。





あれを綺麗にできる人なんているのだろうか。















ぐっと左右の羽を引っ張る。









































手のひらに、ペコペコ羽が不安定な鶴。

























……ちょっとだけ、満足した。





達成感、というほど大きなものではないけど。























…折り鶴の折り方をいつ、どこで知ったのかはわからない。











それでも、みんな知ってる。



























だから____







































校舎の屋上から乗り出す。























そこだけ、絵のように見えた。


















ボロボロの骨組みだけの、丸い半球。








































空に、飛行機が飛んでいた。


















ずっと昔、だけど思ったよりもずっと最近、あの半球にとんでもないものが落とされたのだ。
















緑の落とし物とはわけがちがう。
























でも、僕にはこの緑の羽ばたく鳥がある。





















きっと、僕だけじゃない。




















この世界中の人が。



































大きく息を吐いた。
















































緑の平和のカミサマを一つ残して、僕は校舎の階段へと走り出した。
















< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop