領地開拓のために捨てられ令息を拾ったら、わんこ系イケメンになって懐かれました!
 馬車を降りたアミュエル・ノルフィ・スタンは、豪華な入り口を眺め、ごくりと生唾を飲み込んだ。
 白地に金で装飾された柱と扉。大理石の床。なにもかもが壮麗だ。

「さすが国王の宮殿。手入れの人件費を考えただけでめまいがする」
「なにをしている」
 隣に立った父、ジェイソン・ノルフィ・スタンに言われて、アミュエルは彼を見た。

「お金の偉大さについて考えてたの」
「だったらわかってるだろうな」
「もちろん」
 アミュエルの返事に、ジェイソンは頷く。

「うちで働いてくれる男性をスカウトすることよ!」
「金持ちの結婚相手を見つけることだ!」

 はもった内容の差異に、アミュエル首をかしげてはジェイソンに言う。
「我が家の目下の課題は領地改革よね?」
「そうだ」

「領地改革には人手が大事よ」
「優しくて金持ちで、異能もある婿を探したほうが早いだろ。資金援助をしてもらえる」

「そんな優良物件余ってるわけないし!」
 アミュエルが反論したとき、入り口に立つ係の男性がこほんと空咳をした。
 はっとして振り返ると入場待ちの淑女とエスコートの男性がいて、迷惑そうにアミュエルたちを見ている。

「参りましょう、お父様」
「うむ」
 ジェイソンがくの字に曲げた右腕にアミュエルがつかまり、しずしずと入場した。
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