恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 今思えば父は、身分差をわきまえよといいたかったのだろう。決して、リリーステラ様に懸想などするなと。

 手袋に包まれた自身の手のひらを見つめた。

 あの日から、一度たりともリリーステラ様に素手では触れていない。
 侍従として恥ずかしくないよう振る舞ってきた。この胸にあるお慕いする気持ちを、白い手袋で覆ってきた。

 それもこれも、リリーステラ様の幸せを思ってのことだ。
 家格が低い私では、どう頑張っても彼女と結ばれることはない。私では幸せにできない。だから、リリーステラ様が誰よりも素晴らしい令嬢となれるよう、お守りしてきた。

 だというのに!

 学園の図書館裏で涙を流すお姿を思い出し、怒りが込み上げてきた。その時だった。

「アルフレッド様、こちらにいましたか」

 振り返ると、メイドの一人がほっと安堵するように息をした。

「どうしましたか?」
「旦那様が、お話しがあるから書斎まで来るようにと」
「わかりました。申し訳ありませんが、ハーブティーをリリーステラ様へお持ちください」
「お任せください!」

 ばっと笑顔になったメイドと入れ代わるようにして、配膳室(スティル・ルーム)を出た。
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