恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 (くら)い目をしたダイアナの赤い唇が、どうしてと問うように震える。

 どうして癒し手であることを、私が秘密にしていたのかなんて簡単なことよ。
 癒し手は崇められる存在じゃないわ。

 王太子妃殿下は五百年に一度の癒し手で聖女と呼ばれていらっしゃるけど、それと比べたら私なんて足元にも及ばない。

 五十年どころか、百年に一度の癒し手程度で偉そうな顔をするなんて、恥ずかしいことこの上ないのよ。

 それに私とダイアナが通う学科は癒し手が学ぶところ。何年に一度などと称えられても、成績がともわなければ笑われるわ。そうなったら、家の恥だもの。
 黙っていることこそが、身を守るときもある。それだけのこと。

 フェリクス様には「百年に一度の癒し手」だと伝えていたのに。どうして忘れられてしまったのかしら。
 この力をもって生涯オーランド領に尽くすと誓ったのに。

 八年も前の婚約など、簡単に忘れてしまうものなのね。

 ほんの少し寂しい気持ちでフェリクス様を見ていると、お父様が私に声をかけてきた。

「リリーステラ。お前は、ダイアナを虐めていたのか?」
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