恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 険しい顔をするアルフレッドが手を伸ばしている。それを掴むと、力強く引き寄せられた。

 私のスカートがバサバサと音を立てる。

 ほんの数分前、最上階を進んでいた塔を、もう一度、見上げた。
 それほど高い塔ではない。だけど、私たちはまだ落下している。

「アルフレッド、変じゃない!?」
「なにがですか!?」

 バサバサと翻る衣服の音にかき消されないよう、揃って声を張り上げた。

「まだ地面が見えないわ!」

 下を見ると雲が広がっている。雲を突き抜けるような高い塔だったかしら?

「この塔は枯れていなかったのでしょう」
「枯れていなかった?」
「生きている遺跡は、時空が歪むんです。詳しい話しは後です!」
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