恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 ゆっくりと顔を上げたアルフレッドの頬はまだ赤かった。

「ありがとう、アルフレッド。でもね、貴方が倒れたら誰が私を守るの?」

 守護壁の魔法なら私でも展開できるが、ここは敢えてそれを伏せた。
 すると、はっとしたアルフレッドと視線が合った。

「もう無理はしないでね」
「……わかりました」

 恥じるようにしながらも笑ってくれたアルフレッドは、私の手を引いて立ち上がった。

「ふふっ、なんだか嬉しいわ」
「なにがですか?」
「だって、いつもは私が慰められる側だったのよ、それが、逆転したんだもの」
「……情けない姿を見せてしまいました」

 また落ち込みそうになるアルフレッドの手を握りしめ「責めてないのよ!」というと、その耳がまた少し赤く染まった。

「意外な姿を見られたのは、きっと、アルフレッドのお嫁さんになれたからね」

 その言葉は追い討ちをかけてしまったみたいで、耳が真っ赤になる。

 そうして木々を掻き分けながら進むと、開けた先で付き添いのメイドが私たちに気付いた。
 泣きながら駆け寄ってくる彼女の後ろからは、護衛の人たちも走ってくる。どうやら、皆、無事だったみたいね。
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