恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「うん。これからずっと一緒だもの。少しずつでいいから……」

 胸を高鳴らせながら、気恥ずかしさとともに「私たちらしく夫婦になりましょう」と告げれば、アルフレッドの目が見開かれた。

 明かりを浴びたエメラルドの瞳が輝く。

 私の耳元に顔を近づけ、アルフレッドは唇が耳に触れそうな位置で、そっと囁いた。

「愛しています」

 低く艶めいた声が耳を震わせるのが、こんなに心地いいだなんて知らなかった。
 くすぐったく感じながら「私も愛しているわ」といえば、強く抱きすくめられる。

「このままベッドまで拐ってしまいたいところですが」

 本気か冗談かわからない言葉に、全身がカッと熱くなった。きっと、うなじまで真っ赤に染まっていただろう。

 アルフレッドの腕が緩んだ。見上げると、少し残念そうな顔で私を見下ろしている。
 結婚したのだし、いつまでも清い仲というわけにもいかないって、わかっているのよ。でも……

「ヴァネッサ様が、大食堂で待っているのでしょ?」

 まだ恥ずかしさを乗り越える勇気はなく、アルフレッドの腕に指をかけた。

「さあ、行ましょう」

 笑顔で促すと、アルフレッドは「仰せのままに」と囁き、私の髪へと口付けた。
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