妹ばかり見ている婚約者はもういりません
「いや、やはり何かあっては心配だ。これからも王宮に来るときは同行させて欲しい」

「ラウロ様……」

「それに、両陛下のこと以外にも心配なことがある。コルラード殿下が俺を嫌っているのは知っているだろう? あの人がジュスティーナ嬢に何かして来ないか不安なんだ」

 ラウロ様は眉間に皺を寄せて言う。

 確かに、第二王子のコルラード様は随分とラウロ様を敵視しているようだった。

 お屋敷までやって来て私がラウロ様の呪いを解かないように連れて行こうとしたり、ラウロ様をナイフで脅したりと、彼の態度は少々度が過ぎていたように思う。


「どうしてコルラード様はラウロ様を敵視なさっているんでしょうね。同じご兄弟でも、サヴェリオ様の方はラウロ様に友好的でしたのに」

 先日、サヴェリオ様とその婚約者様と四人で顔を合わせたときのことを思い出す。

 サヴェリオ様はラウロ様の呪いが解けたことをとても喜んでいて、これからはようやく同じ王族として過ごせるな、と嬉しそうに話していた。


「……コルラード殿下は、正妃の子でないことを負い目に感じているようなんだ。殿下の母君である第二妃本人が、幼少期から正妃の子に負けないようにと何度も言い聞かせてきたらしいから、それが関係しているのかもしれない。正妃の子である俺の呪いが解けたら立場が奪われると恐れているみたいだ」

 ラウロ様は少々言いづらそうに説明してくれる。

 王宮へ通うようになって知ったのだけれど、国王様は第二妃様に対してあまり関心がない様子だ。

 王妃様とは大変仲がいい反面、第二妃様とは必要以上に関わろうとしない。

 そのような関係であれば、第二妃様や、そのお子であるコルラード様が、自身の立場を危ぶむのも無理はないのかもしれない。

 だからといって、ラウロ様に敵意を向けてくるのは納得がいかないけれど。


「俺はコルラード殿下の立場を奪う気などさらさらないから、放っておいてくれたら助かるんだがな……。直接食ってかかってくるだけならともかく、隠れてあることないこと噂を流されると訂正しようがなくて困るよ」

 ラウロ様は遠い目になって言った。

「噂ってどんなですか?」

「ジュスティーナ嬢も聞いたことがないか? 俺は噂によると、気に入らない者はすぐさま剣で切りつけて、その上親の威光を借りて表沙汰にしないよう被害者を脅す卑劣な人間らしい。当然一度もそんなことをしたことはないんだが」

 ラウロ様は苦々しい顔でそう説明する。

 そういえば、ミリアムさんが前にそのようなことを話していたのを思い出した。


「ひどいお兄様ですわね。その話、あんまり実物のラウロ様とかけ離れているから、一体誰がそんな噂を流したのかと疑問に思っていたんです。出どころはコルラード様だったのですね」

「ジュスティーナ嬢は信じないでくれたんだな」

「ええ。実物を見ていれば全く違うことはすぐにわかりましたもの」

 私が憤慨しながらそう言うと、ラウロ様の口元が緩む。
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