妹ばかり見ている婚約者はもういりません
 横でその光景を見ていたお母様が、そろりとラウロ様の方に近づいて尋ねた。

「ラウロ殿下。お聞きしたいのですが……娘とはどのような関係でいらして? わざわざお屋敷に置いてくださって、今日も娘と一緒に我が屋敷までお越しくださったということは、ジュスティーナをもらい受けてくださると受け取ってよろしいのかしら」

「お母様!」

 私は慌ててお母様を止める。

 突然そんなことを言っては、ラウロ様を困らせてしまう。しかし慌てる私をよそに、ラウロ様はお母様とその横にいるお父様に向かってきっぱり言ってくれた。


「ジュスティーナ嬢が受け入れてくれるなら、ぜひ彼女に伴侶になって欲しいと思っています」

「ラ、ラウロ様……」

 ラウロ様の口から伴侶と言う言葉が出た途端、頬が熱くなった。

 ラウロ様の答えを聞いたお母様は満面の笑みになり、お父様も下卑た表情で口元をにやつかせている。


 薄々わかっていたけれど、二人が家出した娘を叱りもせず笑顔で出迎えてくれたのは、王子であるラウロ様と繋がりができたと喜んでいるからなのだろう。

 両親の打算的な反応にいたたまれなくなり、私は縮こまった。ラウロ様はこの状況をどう感じているのだろう。


 すっかりご機嫌になった二人は、ソファに腰掛けると、ルドヴィク様のことを話してくれた。

 驚いたことに、ルドヴィク様はティローネ伯爵……つまり彼のお父様から、跡取りを弟に替えると言い渡されたそうだ。

 ルドヴィク様の弟は、彼とは対照的に真面目で努力家な方だ。将来は役人になるのだと、まだ幼い頃から一生懸命勉強していたのが印象に残っている。

 確かに彼ならいい領主になれそうだけれど、なぜ長男で次期伯爵として育てられたはずのルドヴィク様が跡取りから外されるのだろう。


「ティローネ伯爵は、ルドヴィク君がジュスティーナに対して不誠実な態度を取り続けてきたことを知りひどくお怒りだった。そのような者を跡継ぎにさせるのは不安があったのだろう。私たちも全く知らなかったから、ルドヴィク君には憤っているよ」

「ええ、知っていたらすぐにでも婚約を解消させたのに……。あなたには申し訳ないことをしたわ」

 お父様とお母様は深刻そうな顔で言う。


 しかし、両親にはルドヴィク様からの扱いや、彼が私よりフェリーチェを気に入っているらしいことは何度も伝えてきていた。

 なぜそんな芝居をするのかと複雑な気持ちになる。いや、答えはわかっているのだけれど。

 そんなことを考えていたところで、フェリーチェのことが頭に浮かぶ。
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