妹ばかり見ている婚約者はもういりません
「あの、ラウロ様」

「ん? どうした、行かなくていいのか?」

「いえ……、ラウロ様はパーティーに参加なさるのですか?」

 少しどきどきしながら尋ねた。

 有名貴族の集まるこの学園でクラスや学年の違う生徒と知り合える機会とあり、ダンスパーティーの出席率はとても高い。

 特に、婚約者のいる者ならば関係を表に出す絶好の機会となり、ほとんどの者が参加している。

 ラウロ様は私を家に呼んでくれたくらいなので、婚約者やそれに近い方はいないと思い込んでいたけれど、もしかしたら揃ってダンスパーティーに参加するような方がいらっしゃるかもしれない。

 今さらながら気になって仕方なくなる。

 しかし、私の緊張を打ち消すようにラウロ様は平然と言った。


「いや、俺はああいう煌びやかな場所が苦手だから、いつも参加していないんだ。今回も欠席する予定だよ」

「まぁ、そうなんですね!」

「なんだか嬉しそうだな」

「だってダンスパーティーにいつも参加していないってことは、婚約者はいないということでしょう? よかっ……」

 言いかけて慌てて口に手をあてる。私は一体何を言おうとしているのだろう。


「あ、いえ、深い意味はないのですが。婚約者がいらしたら私があまりそばにいると迷惑ではないかと思って」

「ああ、そういうことか。俺に婚約者はいないし、これからも誰かと婚約するつもりはないから気にしなくていい」

 不思議そうな顔をしていたラウロ様は、私がごまかすとあっさりした態度で言った。ごまかせてほっとしたけれど、少し残念な気持ちになるのはなぜだろう。

「そうなのですね。それは安心しました。それでは、事務所に行ってきます」

「ああ、気をつけて」

 再び事務所に歩き出そうとするが、なかなか足が動かない。頭の中で逡巡し、こんなことを言っていいものだろうかと迷い始める。

 しばらく悩んだ後、私は意を決して振り返った。


「あの……ラウロ様!」

「なんだ?」

「私とダンスパーティーに参加してくださいませんか!?」

 思い切ってそう言うと、ラウロ様は目をぱちくりしてこちらを見ていた。不思議そうな顔をされ、途端に頬が熱くなる。

 やっぱりこんなことを言うのはやめておけばよかったかしら。

 私は言い訳するように言った。


「その、ルドヴィク様は私が契約石を壊したので、多分嬉々としてフェリーチェを伴ってパーティーに参加するんだろうなと……。二人で私が欠席してくれてよかったと笑い合っているところを想像したら嫌な気分になりまして」

「ああ、それは確かに腹が立つな……。でもそれなら、なおさら俺と一緒じゃないほうがいいんじゃないか? こんな大きな痣のある醜い男なんかではなくて、もっと見目の良い者に頼んだほうがいいだろう」

 ラウロ様が真面目な顔で言うので、私はちょっと納得がいかなくなる。
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