妹ばかり見ている婚約者はもういりません
「醜くなんかないですわ! ラウロ様は美しいです!!」

「え? うつく……? いや、少なくとも美しくはないと思うが」

 私が勢い込んで言うと、ラウロ様は戸惑ったように言った。男性に向かって美しいはおかしかったかもしれない。ちょっと恥ずかしくなった。

「と、とにかく私はラウロ様に一緒に来て欲しいのです! ラウロ様がお嫌でなければですけれど!」

「本当に俺じゃないほうがいいと思うんだがな……」

 ラウロ様は返答に困っている様子だった。やっぱり駄目かと私は肩を落とす。

 ラウロ様が親切だからって、調子に乗り過ぎてしまったかもしれない。


「でも、今からちょうどいいパートナーを探すのも大変か」

 ラウロ様はぽつりとそう呟いた。私は思わずぱっと顔を上げる。

「俺で力になれるかはわからないが、ジュスティーナ嬢が望むなら参加するよ」

「あ、ありがとうございます……っ」

 私は嬉しくなって、胸の前で両手を組み合わせた。ラウロ様が一緒に参加してくれる。会場でずっとそばにいられるのだ。

 自分がこんなことを言えるなんて不思議だった。今までは自分の願望なんて到底口に出来なかったのに。


「君にそんな真剣な顔で頼まれたら断れないからな」

 ラウロ様は少し照れたように笑って言った。その表情を見たら、私まで照れてしまう。けれど胸の奥はぽかぽか温かかった。


***


 ダンスパーティーまで日がないので、大急ぎで準備をすることになった。

 まずはドレスを選ばなければと考えて、そこでようやくドレスは全て家にあることを思い出す。

 私が青ざめていると、ラウロ様は既製品でよければパーティーの前に買いに行こうと言ってくれた。

 こちらから誘っておいてドレスまで買ってもらうのはと戸惑っていると、私の恐縮ぶりを見兼ねたのか、エルダさんが「それならお屋敷にあるドレスをお直して着られては?」と助け船を出してくれた。


 それからエルダさんは倉庫から数枚のドレスを持ってきてくれた。

 なんでもこのお屋敷は、元はラウロ様のお母様のご実家が所有する別荘だったそうで、お母様が昔着ていたというドレスがいくつもあった。

 流行に左右されないようなオーソドックスなドレスもたくさんあり、今着ても全く問題なさそうだった。

「どれも母上はもう着ないだろうから、遠慮せず好きなものを選んでくれ」

 ラウロ様は淡々とした声でそう言ってくれる。
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