妹ばかり見ている婚約者はもういりません
「本当にどんなでも構いませんわ! どうか私と一緒に踊ってくださいませ!」

 嬉しくなって、ついラウロ様に手を差し出す。

 あ、ダンスパーティーだというのに女の私の方から誘ってしまったわ、とはっとしたところで、楽しげな笑い声とともにラウロ様に手を取られた。

「ああ、よろしく頼む」

 ラウロ様があんまり優しげな目でこちらを見るので、心臓の音が早くなる。今度は私のほうがぎくしゃくしながらも、足を踏み出した。

 音楽に合わせ、会場の生徒たちが踊り始める。それに続くように私たちもダンスを踊った。

 ステップを踏んで、ターンして。音楽とともに体が動いていく。

「ラウロ様、お上手ではないですか」

 手を引いて体をくるりと回されたところで、思わずそう呟いた。

 ラウロ様の動きは、多少のぎこちなさはあるものの、十分自然で上手だった。その上、こちらの動きをよく見て合わせてくれるのでとても踊りやすい。

「本当か?」

「ええ、すごく踊りやすいです」

 私が答えると、ラウロ様は嬉しそうな、ほっとしたような顔をする。

 軽やかな音楽が続いていた。

 時折ラウロ様と顔が近づくので、落ち着かなくなる。今さらになって背中に回された手の感触を意識してしまう。

 自分がこれまでのパーティーよりもずっと緊張していることに気が付いた。いつもはもっと凪いだ気持ちでいられたのに。

 でも、この緊張はちっとも嫌じゃない。


 私にとってダンスパーティーとは、ルドヴィク様に冷たい視線を向けられ、嫌々一緒に踊ってくれる彼を少しでも苛立たせないように気を張るだけの行事だった。

 一度目のダンスが終わると、いつもすぐに私から離れていってしまったルドヴィク様。

 私から離れた後は、婚約者以外と連続して踊り続けないというルールなんか無視して、ずっとフェリーチェと踊っていた。

 私には決して向けない楽しげな笑みをフェリーチェに向けるルドヴィク様と、甘えるように彼に笑顔を返すフェリーチェを眺めるのは、ひどく憂鬱なことだった。

 顔を上げると、ラウロ様の澄んだ青い目と視線が合う。


「ジュスティーナ嬢、大丈夫か? 悲しそうに見えたが」

 ラウロ様は気遣わしげにそう尋ねてくる。

 これまでのパーティーでのことを思い出して、憂鬱な気持ちが顔に出てしまったのだろうか。私は笑顔で首を横に振った。

「いいえ、私、今とても楽しいですわ」
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