妹ばかり見ている婚約者はもういりません
***
一曲目のダンスが終わり、短い休憩の時間になる。
私たちはホールの端へ向かった。ほかの生徒たちも楽しそうに話しながら移動している。
「とっても楽しかったですわ! ラウロ様、リードがお上手ですのね」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。いくらいらないと言っても練習を続けさせてきてくれたエルダさんに感謝しなくてはならないな」
私が褒めると、ラウロ様は少し照れたようにそう口にする。
「ラウロ様、エルダさんからダンスを習ったのですか?」
「ああ、子供の頃はダンスなんて覚える必要はないとごねていたんだが、エルダさんはその度に俺をホールまで引っ張って行って根気よく教えてくれたんだ。今、心から感謝してる」
「ふふ、それでは私もエルダさんに感謝しなければなりませんわ。そのおかげでラウロ様と踊れたんですもの」
壁際でそんなことを話していると、ふいに周りでざわめきが起こった。
何事かと思って声のする方を見る。するとそこには明るい金色の髪の、銀糸で刺繍のされた青い宮廷服を着た輝くばかりの美青年がいる。
第二王子のコルラード様だ。
コルラード様は完璧な笑顔で生徒たちの間を歩く。女子生徒たちは彼がそばに来ると、きゃあきゃあ声を上げた。
第一王子のサヴェリオ様と同じく、いや、もしかするとそれ以上にコルラード様は人気がある。サヴェリオ様がどちらかというと温厚で穏やかな性格なのに対し、コルラード様は自信家で少し高圧的なところがあった。
しかし普段の立ち居振る舞いは完璧で、勉学も剣術も非常に優秀なので、激しさのあるその性格さえ人々からは理想的なものだと捉えられていた。
また、サヴェリオ様と違いコルラード様はまだ婚約者が決まっていないため、令嬢たちの中には彼の妃になりたいと切望する者も少なくなかった。
「ラウロ様、コルラード殿下ですわ。こんなに近くで見られるのは珍しいですわね」
「……あぁ。そうだな」
何気なくそう言うと、ラウロ様はなぜだか苦い顔をする。私は不思議に思ってその顔を見つめる。
「そこのグリーンのドレスのご令嬢。少しいいかな」
「え?」
突然声をかけられ、ぱっとそちらに顔を向けた。
するとそこには、驚くべきことにコルラード殿下が立っていた。人違いかと思いきょろきょろ辺りを見回すが、彼の目は真っ直ぐこちらに向いている。
「わ、私ですか?」
「ああ、なんだかやけに目を引いて。そのドレス、とても君に似合っているね」
思ってもみなかった事態に私は目をぱちくりする。
コルラード殿下のファンであろうご令嬢たちが、目を見開いて驚きやら怒りやら入り混じった視線をこちらに向けてくるのがわかった。
一曲目のダンスが終わり、短い休憩の時間になる。
私たちはホールの端へ向かった。ほかの生徒たちも楽しそうに話しながら移動している。
「とっても楽しかったですわ! ラウロ様、リードがお上手ですのね」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。いくらいらないと言っても練習を続けさせてきてくれたエルダさんに感謝しなくてはならないな」
私が褒めると、ラウロ様は少し照れたようにそう口にする。
「ラウロ様、エルダさんからダンスを習ったのですか?」
「ああ、子供の頃はダンスなんて覚える必要はないとごねていたんだが、エルダさんはその度に俺をホールまで引っ張って行って根気よく教えてくれたんだ。今、心から感謝してる」
「ふふ、それでは私もエルダさんに感謝しなければなりませんわ。そのおかげでラウロ様と踊れたんですもの」
壁際でそんなことを話していると、ふいに周りでざわめきが起こった。
何事かと思って声のする方を見る。するとそこには明るい金色の髪の、銀糸で刺繍のされた青い宮廷服を着た輝くばかりの美青年がいる。
第二王子のコルラード様だ。
コルラード様は完璧な笑顔で生徒たちの間を歩く。女子生徒たちは彼がそばに来ると、きゃあきゃあ声を上げた。
第一王子のサヴェリオ様と同じく、いや、もしかするとそれ以上にコルラード様は人気がある。サヴェリオ様がどちらかというと温厚で穏やかな性格なのに対し、コルラード様は自信家で少し高圧的なところがあった。
しかし普段の立ち居振る舞いは完璧で、勉学も剣術も非常に優秀なので、激しさのあるその性格さえ人々からは理想的なものだと捉えられていた。
また、サヴェリオ様と違いコルラード様はまだ婚約者が決まっていないため、令嬢たちの中には彼の妃になりたいと切望する者も少なくなかった。
「ラウロ様、コルラード殿下ですわ。こんなに近くで見られるのは珍しいですわね」
「……あぁ。そうだな」
何気なくそう言うと、ラウロ様はなぜだか苦い顔をする。私は不思議に思ってその顔を見つめる。
「そこのグリーンのドレスのご令嬢。少しいいかな」
「え?」
突然声をかけられ、ぱっとそちらに顔を向けた。
するとそこには、驚くべきことにコルラード殿下が立っていた。人違いかと思いきょろきょろ辺りを見回すが、彼の目は真っ直ぐこちらに向いている。
「わ、私ですか?」
「ああ、なんだかやけに目を引いて。そのドレス、とても君に似合っているね」
思ってもみなかった事態に私は目をぱちくりする。
コルラード殿下のファンであろうご令嬢たちが、目を見開いて驚きやら怒りやら入り混じった視線をこちらに向けてくるのがわかった。