妹ばかり見ている婚約者はもういりません

8.突然の訪問

 ラウロ様の研究室は、書庫の少し先にあった。

 扉は書庫の扉より鮮やかな青色をしている。落ち着いた色調のお屋敷の中でよく目立っていた。

 確かにこれは、お屋敷の中で青い扉の部屋と呼ばれているのもわかるかもしれない。


「ごちゃごちゃした場所で悪いが、どうぞ入ってくれ」

 ラウロ様が扉を開けて中へ入るよう促してくれたので、私はそっと中へ足を踏み入れる。

 部屋の中には、大量の鉢植えや、中に植物の入ったガラスケース、実験道具のようなものなどがいっぱいに置かれていた。

 壁は白く、大きな窓から太陽の光が差し込んでいるので、部屋全体がとても明るい。実験室とサンルームの間のような印象を受けた。

「とても素敵なところですね! ここがラウロ様の研究室!」

「興味があるならどれでも近くで見てくれて構わない」

 ラウロ様がそう言ってくれたので、私は遠慮なく部屋を見回すことにした。

 すると部屋の右側に、壁にびっしりとさまざまな種類の蔦の這ったスペースがあることに気が付いた。


「ラウロ様、あれは?」

「ああ、あれは魔力を持っているという蔦を集めて育てているんだ。俺の顔につけられた痣は蔦のような形をしているから、調べたら何かわかるんじゃないかと思って」

「なるほど……」

 壁に近づいて蔦を見てみる。青みがかった蔦や、丸っぽい葉を持つ蔦など、色んな種類があったけれど、ラウロ様の痣と似た蔦はなかった。

 ふと、先ほど見た短剣に絡みついていた蔦が頭をよぎる。


「あの、ラウロ様……」

「なんだ?」

 あの蔦の絡みついていた短剣は何なのか、やっぱりとても気になる。ラウロ様にかけられたという『呪い』と関係しているのだろうか。


 しかし、尋ねようとして口を開きかけたところで、扉の向こうから急にバタバタと足音が聞こえてきた。

 驚いてそちらを見ると、ノックもなく扉が開く。顔を出したのはお屋敷で働いている使用人のドナートさんだった。


「ラウロ様、ジュスティーナ様、お客様がいらしています!!」

「客? そんな予定はなかったはずだが……」

 ドナートさんの言葉に、ラウロ様は首を傾げる。

「まぁいいか。ジュスティーナ嬢、少し待っていてくれ」

「はい、お待ちしております」

 ラウロ様にそう言われ、私はこくりとうなずいた。すると、ドナートさんは言いづらそうにこちらを見て言う。

「いえ、実は客人はジュスティーナ様もお呼びしておりまして。一緒に来ていただけるでしょうか」

「え?」

 思わず間抜けな声が出てしまった。

 ラウロ様のお屋敷に私を呼ぶお客様? ドナートさんの返答を聞いたラウロ様も驚いた顔をしている。
< 48 / 108 >

この作品をシェア

pagetop