妹ばかり見ている婚約者はもういりません

11.焦燥 ルドヴィク視点②

 ある日の午後、俺は自宅のシッティングルームで両親と向かい合っていた。

「ルドヴィク、ジュスティーナさんとはうまくやっているのか? お前は彼女に愛想のない態度ばかり取っているから」

「そうよ、ルドヴィク。逃げられないようにちゃんと大事にするのよ」

 両親は俺と顔を合わせる度、しょっちゅうジュスティーナの話題を出す。

 いつも苦々しい気持ちで聞いていたが、ここ最近は余計に話を聞くのが苦痛だった。


 両親にはまだジュスティーナとの婚約が破棄されたことを話していない。

 さっさと言ってしまうつもりだったのに、両親が期待と圧力を込めた目でジュスティーナと仲良くしているのか尋ねてくると、どうにも真実を話すのが億劫になるのだ。

 けれど、今日こそは婚約破棄のことを話すと決めていた。

 ジュスティーナとの婚約はなくなったから妹のフェリーチェを新たに婚約者にしたいと、はっきり告げなければならない。

 しかし、そんな俺の気持ちをくじくように、父と母は明るい顔でジュスティーナの話を続ける。


「ジュスティーナさん、またうちの領地を回るのを手伝ってくれないかしら。あの子がいればどんな不作続きの土地も豊かになるから、領民からのティローネ家への評価がどんどん上がるのよ」

「近いうちにこちらに来てもらおう。その時は新しく拡大する予定の農地についても相談したい。ジュスティーナさんの力があれば、小麦も野菜もろくに育たない痩せた土地でも作物を育てられるはずだからな。領地の南東に、土が悪くてほとんど使われていない土地があるだろう? 今度、そこも農地として使う計画を立てているんだ。すでに働き手も集めている」

「まぁ、あの土地を有効活用できるならいいわね。それにしても本当にすごい能力だわ。枯れた植物でも蘇らせ、やせ細った作物を丸々と太らせるなんて。ジュスティーナさんがいる限りうちは安泰ね」

「ローレ家がジュスティーナさんの能力の価値に気づいていないのは幸運だったよ。このままルドヴィクと正式に結婚するまで、ほかの家に彼女の能力がバレないようにしておかないとな」

 父と母は顔を見合わせて笑い合う。

 なんだか聞いてはいけない話題が出てきたように思うのは気のせいだろうか。

 俺はひやひやする気持ちを抑えつけ、きっと両親を見据える。


 大丈夫だ。農地の拡大などなんだの言っているが、ジュスティーナの能力なんて大したことがない。

 あいつがいなくても、どこかからいい肥料や栄養剤でも入手できれば、土地なんて簡単によくなるだろう。

 ジュスティーナなどその程度の存在なのだ。
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