妹ばかり見ている婚約者はもういりません

12.お誘い

 放課後に校舎裏まで行くと、すでにラウロ様が待っていた。

 教室の近くで待ち合わせすると目立つので、ラウロ様のお屋敷に置いてもらって最初の日以降は、いつもあまり人が来ないこの場所で待ち合わせすることにしている。

 それが幸いしてか、今はラウロ様の周りに誰もいなかった。

 女の子たちに囲まれていないことにほっとしながら、彼の方に足を進める。


「ラウロ様、お待たせしました」

「ジュスティーナ嬢」

 私が声をかけると、ラウロ様は明るい顔で振り返る。

 目が合った途端、さっきようやく痣のないラウロ様とも自然に向かい合えると思ったのに、ミリアムさんとの会話が蘇ってどぎまぎしてしまった。

 私は何とか平静を装って尋ねる。


「ラウロ様、今日は大変じゃありませんでしたか? 皆さんに囲まれて」

「ああ。休み時間の度に取り囲まれて痣のことを聞かれるから、少々困った」

「それはそれは……」

「けれど、突然顔半分を覆っていた痣が消えていたら、気になるのも無理はないかもしれないな。明日には皆の興味が引いていることを願うよ」

 ラウロ様は痣のなくなった頬に手を触れながら苦笑いした。

 消えた痣のことが気になっているのは本当だと思うけれど、多分一番の理由はみんなラウロ様と近づくためのきっかけが欲しいのだと思う。

 おそらく明日も明後日も皆の興味が引くことはないだろうなと思うと、複雑な気持ちになった。

「それじゃあ帰ろうか、ジュスティーナ嬢」

「は、はい……!」

 眩しい笑顔を向けられ、私は少々動揺しながらもうなずいた。


 それからいつも通り、ラウロ様の家の馬車に乗せてもらいお屋敷まで向かった。

 いつもだったらラウロ様と馬車に乗っている時間は心地がいいのに、今はやけに落ち着かない。

 結局私はその日、行きも帰りもずっと馬車の中で固くなったまま過ごしてしまった。



 いつもより長く感じる時間が過ぎて、馬車はお屋敷に到着した。

 門をくぐって玄関ホールに入ると、すぐさま大きな足音と共にエルダさんが駆けよって来た。

「ラウロ様! 大変です! 陛下からお手紙ですわ!!」

「陛下から? もう返事が来たのか」

 血相を変えて言うエルダさんに、ラウロ様は驚いた顔をする。

 そういえば、昨日陛下と王妃様に手紙を出すと話していた。しかし、昨日の今日でもう返事まで来るなんて。

 意外そうに手紙を見つめるラウロ様に、エルダさんは目を輝かせて言う。


「きっと使者が急いでくれたのですわ。一大事なので、陛下も大急ぎで返事をくださったのでしょう。なんて書いてあるのでしょうね。ラウロ様、早く開けてみてくださいませ!」

「ああ、わかった……」

 興奮した様子のエルダさんに対し、ラウロ様はあまり乗り気ではない様子で手紙の封を切る。

 静かに手紙に目を通していたラウロ様は、顔をあげるといつもの淡々とした声で言った。
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