妹ばかり見ている婚約者はもういりません
 ラウロ様を探してお屋敷の中を歩いていると、使用人のドナートさんがラウロ様は温室の方にいると教えてくれた。

 私はお礼を言ってすぐに温室へ駆けて行く。


 温室のガラス張りの壁から中をのぞくと、花壇の前でしゃがんで植物を見ているラウロ様の姿が見えた。

 私がガラスに近づくと、ラウロ様はこちらに気づいたようで、入っていいと手で合図してくれる。

 私は裏に回って扉を開け、温室に足を踏み入れた。


「ジュスティーナ嬢。どうかしたのか?」

 ラウロ様のいた花壇の前まで行くと、彼は首を傾げてこちらを見た。

 本人を前にすると、『ダンスパーティーでラウロ様がほかの女の子に誘われたらと考えたら、いてもたってもいられなくなって来てしまいました』だなんて言いづらくなる。

 私は言い訳するように言葉を並べた。


「ええと……温室の植物が見たいなと思って。なんだか草花と触れ合いたい気分でして……」

「はは、ジュスティーナ嬢は本当に植物が好きなんだな。いいよ、いくらでも見て行ってくれ」

 ラウロ様は笑いながら了承してくれる。

 私はお言葉に甘えて、ラウロ様の横にしゃがんで花壇の花を眺めた。

 色とりどりの花たちはやっぱりとても美しい。どの花も伸びやかに育って、瑞々しく咲いていた。

 綺麗に整えられた花壇は私の心を和ませてくれる。


「とても綺麗ですね。大事にお世話されているのが伝わってきます」

「ジュスティーナ嬢にそう言ってもらえると光栄だな」

 ラウロ様は私を見て微笑んだ。

 私はしばらくの間、温室の穏やかな空気に浸りながら、美しい花々を眺めていた。


「ジュスティーナ嬢、後で言おうと思っていたんだが」

 花壇の花に見惚れていると、ふいにラウロ様が口を開いた。

「なんですか?」

「その、来週のダンスパーティーのことなんだが……」

 私が話そうとしていたのと同じ話題を出され、少し驚いてしまった。

 なんの話だろうか。まさか、すでにほかのご令嬢から誘われたので、一回目は私と参加したけれど二回目は行かれないとか……?

 私が不安に駆られていると、ラウロ様はわずかに緊張の滲む声で言う。
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