妹ばかり見ている婚約者はもういりません
「ジュスティーナ嬢、今回も俺と参加してくれないか?」

「えっ」

 思わず間抜けな声が出た。ラウロ様は驚いた顔のまま固まる私を見て、遠慮がちに「だめだろうか」と口にする。

「やはりジュスティーナ嬢のような美しい令嬢には、すでにたくさんの誘いが来て……」

「いいえ! そんなことありませんわ! 私もラウロ様をお誘いしようと思っていたのです!」

 勢い込んで言うと、ラウロ様は目をぱちくりする。それから嬉しそうに笑った。

「本当か? それは嬉しいな」

「実は、今もパーティーにお誘いするためにラウロ様を探しに来たところだったのですわ。ちょっと言い出しづらくて、まごついてしまったのですけれど」

 私が正直に白状すると、ラウロ様は声を立てて笑った。それから頬を緩めて、柔らかい声で言う。


「ジュスティーナ嬢、それなら今度ドレスを買いに行かないか。前回は屋敷にあったものを直してもらったが、今回は新しいドレスをプレゼントしたい」

「そんな、申し訳ないですわ。新しいドレスだなんて」

「君は俺の呪いを解いてくれたんだ。ドレス一枚くらいで遠慮することはない。ああ、もちろん、これはこの前約束したお礼とは別だ」

 私が戸惑うと、ラウロ様ははっきりとした口調で言う。

 気持ちは嬉しいけれど、やはり新品を買ってもらうのは申し訳ない。

 この前貸してもらったライトグリーンのドレスをまた貸してもらえれば十分だ。私は断ろうと口を開く。


「ラウロ様、やっぱり新しいものは……」

「それと出来るなら、今回は君に青のドレスを着てもらいたいんだが……だめだろうか?」

 ラウロ様は真剣な目でそう言った。

 青のドレス。一瞬の間を置いて、つまりラウロ様の目の色のドレスだと理解する。

 ダンスパーティーでご令嬢たちは、よく婚約者の目の色と同じ色のドレスを身に纏って、幸せそうな笑みを浮かべていた。

 ラウロ様はどういう意味で言っているのだろうと考えたら、途端に顔が熱くなっていく。

 別に深い意味はないのかもしれない。けれど、そんなことを言われて動揺するなと言うほうが無理だった。


「そ……それでは、お願いしてもよろしいでしょうか」

 赤くなった顔を見られないように若干顔を俯けながらそう答える。

 ラウロ様は私の返事を聞くと、嬉しそうな声で「もちろんだ」と答えてくれた。
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