妹ばかり見ている婚約者はもういりません
「そ、そんなことをしていただくわけにはまいりませんわ」

「気にすることはない。なんなら、ラウロの呪いを解いてくれた褒美はそれにすればいいではないか。それでも申し訳ないと言うのなら、君の希望に合わせて卒業後の王宮での仕事を斡旋することもできる。王宮で働く者のための寮があるから、学生の間からそこに入れるように手配してあげよう」

 国王様は随分とこちらに都合の良い提案をしてくれる。

 住むところや仕事まで用意してくれるなんて、そんなありがたい話はない。

 ありがたい話のはずなのに、国王様の言葉にどうしてだか裏を感じてしまい、なかなかうなずくことが出来なかった。

 返事に窮する私をにこやかに見つめていた国王様は、すっと目を細めて言う。


「その代わり、こちらからも一つ頼みがある。ラウロにはもう近づかないで欲しいんだ」

「え……」

 私は思わず国王様の顔をぽかんと見つめてしまった。国王様は諭すように言う。

「君はローレ子爵家の出身だったね。申し訳ないが、君の家では王家との釣り合いが取れない。君がラウロのそばにいるのは、君のためにもラウロのためにも良くないと思うんだ。だから、もうラウロには近づかないと約束してくれないだろうか」

 国王様の言葉がぐるぐると頭を巡る。

 国王様の言っていることはもっともだった。

 婚約者でもない私が、第三王子であるラウロ様のそばにいるのは良くない。ヨラド王国の第四王女と婚約するのならなおさらだ。

 そもそも気安く近づいてはいけない相手だったのだ。

 頭では理解していた。それでも、ラウロ様に会えなくなるのかと思うと胸が痛んだ。


「……陛下! ジュスティーナ嬢に対して失礼な物言いはおやめください! 彼女は呪いを解いてくれた恩人なのですよ!? そもそも、ジュスティーナ嬢には俺の方から屋敷に来るよう提案したのであって、彼女から俺に近づいたわけではありません!!」

 ラウロ様は椅子から立ち上がると、国王様に向かって反論してくれる。

 ラウロ様の言葉は嬉しかったけれど、陛下の言葉に間違いがないのは私にもよくわかっていた。

 国王様はラウロ様を見て呆れ顔をする。


「呪いの件については当然彼女に感謝している。だからローレ嬢が困ることのないよう配慮しているのだろう。しかしローレ嬢がお前の近くにいては都合が悪いんだ」

「ラウロ、これは国益に関わることなのよ。わかってちょうだい」

 国王様が眉間に皺を寄せて言うと、王妃様はラウロ様に向かってなだめるように言う。そして王妃様は私の方に顔を向け、微笑みながら口にした。

「ジュスティーナさんも理解してくれるわよね?」

 私が口を開く前に、ラウロ様に腕を掴まれた。


「ジュスティーナ嬢、陛下たちの言葉など聞く必要はない。こんな場に連れてきて悪かった。もう帰ろう」

「ラウロ様……」

 ラウロ様は私の腕を引いて、椅子から立ち上がらせようとする。
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