母の世界のTKG
 オリビアが齢18になる頃、妻は病に冒された。
 国中の医師と魔導師が手を尽くしたけれど、治ることはなかった。
 ……妻の衰弱は、夫を亡くした悲しみと過労による疲れで、治癒では治せないものだった。

「オリビア、ごめんなさいね、一人にしてしまって」

「……ううん、ここまで育ててくれてありがとう、ママ」

「パパもママもあなたを愛してるわ」

「ママ……ママの生まれた世界のこと、もっと教えて欲しかった」

「そうね、ママも……最期にTKG食べたかったなあ……」

「TKG……? ママ、それ、何? ……ママ? ママ!?」

 妻はオリビアの手を握ったまま、静かに息を引き取った。
 オリビアはただ混乱の中に取り残された。

「あの、TKGって知ってますか?」

「TKG?」

 オリビアは母の知り合いに「TKG」について聞いて回った。

「あー、ハルカちゃんが言ってたの? それだとわかんないな……」

「ハルカちゃんの遺言? でも材料もわかんないんだよね」

「それ、そもそも食べ物?」

 誰も知らなかった。
 オリビアは国王と姫君の厚意で王城の図書室に入れてもらえたけれど、どの本にも「TKG」は載っていない。
 王城の賢者も、料理長も、誰一人として「TKG」のことは知らなかった。

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