母の世界のTKG
 オリビアは青年を見上げた。

「……んん? なんか……どっかで見た顔だな」

「ナンパですか?」

「ちっげえよ! ……あ、あれだ、写真だ」

 青年は薄い板を取り出して耳に当てた。

「あ、親父? 写真送って欲しいんだけどさ」

 何か話しかけている。
 通信器具なのかしら?
 オリビアが覗き込むと、青年は顔を赤くして眉をひそめた。
 板を耳から外し、口を開きかけたところで、板が震える。

「あ、来た。やっぱ、そうだよなあ」

「なんでしょう?」

 青年が板をオリビアに差し出した。
 見ていいのかしら?
 覗き込むと、そこには母が写っていた。

「ママ……!? どうして……ママがこんな小さな板の中にいるの?」

「板? あんた、スマホを知らねえのか?」

「スマホ……?」

 オリビアが首をかしげると、青年は肩をすくめた。

「んー……えっと、オリビアだっけ? あんた、この後時間ある?」

「は、はい……。でもあの、ここ、どこですか? あなたは?」

「ここは日本の渋谷。俺は植草翔(うえくさ かける)。お前の母親、植草晴香(うえくさ はるか)だな?」

「……そうです。あの、日本というのは?」

「全部には答えてらんない。めんどくせえ。でも、答えてくれるやつがいるから会いに行こう」

 歩き出す翔をオリビアは慌てて追いかけた。


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