【書籍化にて題名変更】勝手に幸せになるので、捨てた私のことは放っておいてください
 謁見の間では陛下と父がまだ話を続けていた。
 
「ん? どうしたのだ? ライアンとバラの庭園に行ったのではないのか?」
 
 陛下の問いかけに、私は涙声で返答する。
 
「も、申し訳ございません。必死で第一王子殿下の後を付いて行ったのですが、わたくしの歩みが遅かったのか、第一王子殿下のお姿を見失ってしまいました。
 自分が何処にいるのか分からず、泣いていた時に、通りすがりの騎士様にこちらまで案内してもらいました」
  
「なんと……ライアンはそなたをちゃんとエスコートしなかったのか」
 
 陛下は渋い顔をして、そう言った。
 
「第一王子殿下の歩みに追いつけなかったわたくしが悪いのです。本当に申し訳ございませんでした」
 
 涙声のまま、肩を震わせてそう告げる私の姿に、陛下も同情的だ。
 
「いや……ライアンが悪い。ルーシー嬢、すまなかったね。
 ヘルツェビナ公爵、今日はルーシー嬢も疲れたであろう。話はまた後日という事で、本日はもう下がってよい。
 早くルーシー嬢を家に連れて帰って、休ませてあげるがよい」
 
 陛下の言葉に、父はやや苦々しく了承した。
 
 帰りの馬車では、父は不機嫌そうにしながらも特に何か言って来る事はなかった。
 
 まずは、ライアン様との初対面の日の行動を変えた。
 もしかしたら、今回は婚約者にならなくてすむかもしれない。
 
 この先の運命が変わるかもしれない事にドキドキしながら、私は屋敷に戻った。
 
 
 
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