『隣で、生きていく。』 こちらはマンガシナリオになります。 「第9回noicomiマンガシナリオ大賞」にエントリーしています。

第15章 未来でまた、君と

柱: 数年後/冬の午後/街外れのカフェ


ト書き:
ガラス越しに見える街路樹は、淡い雪を纏っている。

カップから立ち上る湯気の向こうに、
変わらぬ笑顔があった。


美海(微笑んで):「玲央、やっぱり似合うね。その作業着。」

玲央(照れくさそうに):「うるせぇよ。職場でしか着ねぇのに。」


ト書き:
玲央は専門学校を出て、地元の整備工場に勤めている。

バイクも車も、彼の手にかかれば新品のように蘇る。

昔の荒れた手が、今は“誰かを直す”ためにある。


美海:「忙しいのに、よく来てくれたね。」

玲央:「お前が来るって言うからな。……断る理由、ねぇだろ。」

ト書き:
美海は大学で心理学を学び、
今は心のケアをするサークル活動の中心にいる。

それぞれの道を歩いて、もうすぐ三年。

それでも、ふたりはずっと繋がっていた。


美海(少し照れながら):「ねぇ、覚えてる? あの時の約束。」

玲央(眉を上げて):「どの?」

美海:「“信じ合って生きてく”って言ったでしょ?」

玲央(静かに笑って):「ああ。……忘れるわけねぇ。」


ト書き:
玲央はカップを置き、ふと窓の外を見た。

粉雪が舞い、街のざわめきが遠くで溶けていく。

その横顔は、大人になってもどこか少年のままだった。


美海:「ねぇ、玲央。私ね、人の心を“支える”ことを仕事にしたいの。まだ勉強中だけど、ちゃんと誰かのためになれる人になりたい。」

玲央(ゆっくり頷いて):「……美海らしいな。俺も、いつか自分の工場持ちたい。誰かがまた走り出せる場所を作るんだ。」


ト書き:
言葉の合間に、ふたりの視線が重なる。

変わらない優しさと、確かな成長。

“恋人”という形を超えた、人生の伴走者のような絆。


美海(穏やかに微笑んで):「玲央、昔みたいに言ってみて。」

玲央(少し照れて):「……どれだよ。」

美海(少しだけ挑発的に):「“お前は俺のもんだ”って。」

玲央(少し黙ってから、真剣に):「──違うな。今は、“俺はお前の隣にいる”だ。」


ト書き:
その言葉に、美海の瞳が一瞬揺れ、
ゆっくりと涙がこぼれた。

泣くほど幸せで、泣くほど安心できる愛。


美海(涙を拭って笑う):「……ずるいよ、そういう言い方。」

玲央(小さく笑って):「うるせぇ。……泣くな。」


ト書き:
玲央はハンカチを差し出し、美海の髪を撫でた。

その手の温もりは、昔と変わらない。

けれど今は“支配”ではなく、“支え”の温度だった。


柱: カフェの外/夕暮れ


ト書き:
店を出ると、雪が強くなっていた。

街灯の下、白い息がふわりと重なり、
二人の影が並ぶ。


美海:「寒いね。」

玲央:「……でも、悪くねぇ。」


ト書き:
玲央がポケットに手を突っ込み、
片方を美海に差し出す。

美海はその手を取って、指を絡めた。


玲央(小さく笑って):「こうしてると、昔を思い出す。」

美海(微笑して):「うん。でも今の方が、ずっと好き。」


ト書き:
雪の降る街を、ふたりはゆっくり歩いていく。

過去を越え、痛みを越え、
“奪う愛”を知らない新しい未来へ。


ト書き:
優しさを恐れず、
寄り添う強さを選んだふたり。

それは恋よりも深く、
永遠よりも確かな──
“愛という日常”だった。


Fin__



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