君のためにこの詩(うた)を捧げる

第8話「さよならのかわりに(偽りの微笑み)」

――「もう会わない」



そう言った日の声が、まだ耳の奥に残っていた。


澪はそれから何日も、校門の前で無意識に空を見上げていた。



ニュースでは“橘輝・活動休止”という文字が毎日流れ、
彼のSNSも更新されないままだった。


(どこかで元気にしてるのかな……)


そんなある日。


「結城さん?」
背後から声がした。


振り向くと、そこには見慣れない男の子。



茶色がかった髪、柔らかな笑顔。



転校生だというその子


――朝倉湊(あさくらみなと)は、
どこか空気が違っていた。


「隣の席、俺だって。よろしく」



「うん、よろしく……」


その笑顔は、不思議と優しかった。



けれど、彼の視線の奥には一瞬だけ鋭い光が宿っていた。


< 28 / 56 >

この作品をシェア

pagetop