離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました
(って、日本語で言って伝わる……?)
できるだけ丁寧に告げたが、伝わっている気配はない。未依は考えなしにふたりの前に飛び出した自分の迂闊さを呪いながら、必死に学生時代の英語の授業を思い出し、『Please be quiet.』と言い直した。
すると、伝わりはしたが機嫌を損ねたようで、こちらをキッと睨みつけてくる。
(今もしかして『誰よ、この女!』って思われてる? それ、私のセリフなんだけどな……)
心の中でため息をつく。ざわざわと喧騒が広がっていく中、ひとりの看護師が目ざとく未依に気付いた。
「あれ、律先生の奥さんだ」
「え、修羅場……?」
周囲がひそひそと好奇の視線を向けてくる中、ケイトが律の腕を引っ張り、反対の手で未依を指さした。大声でなにかを捲し立てているケイトに対峙しつつ、未依は冷静にならなくてはと自分を鼓舞する。
(なんとか落ち着かせて、ここから移動してもらわないと)
律と話をしたいなら、せめて場所を移して彼の勤務が終わるのを待っていてほしい。そう頼みたくても、英語の話せない未依には難しい。