離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました

未依はモデルのケイト・デイビスという存在を先日知ったばかりだが、見舞客の女性たちの反応を見るに日本でも知名度があるのだろう。彼女たちは嬉々としてケイトにスマホのレンズを向けている。

噂を聞いて存在を認識していたものの、蠱惑的な身体つきをしている彼女と律が親しげなところを見てしまうと、不安や不快感がせり上がってくる。けれど、そんな私的な感情を優先させている場合ではない。

律はスクラブ姿で、手にはタブレットを持っている。きっとまだ仕事が残っているのだろう。見る限り一刻を争う場面ではないにしろ、彼の時間は有限だ。仕事の邪魔をしてほしくないし、そもそも医師が院内で女性とイチャついているように見えるのは病院の印象としてもよろしくない。

しかし、ケイトはお構いなしに律に話し続けている。会話は英語なので未依にはなにを話しているのかわからないが、律がケイトを窘めているにもかかわらず、彼女の声は大きくなっていく。

(ここは病気と闘う人が入院している病棟なの。大声で騒いでいい場所じゃない)

未依は我慢できず、ふたりに歩み寄る。注目されるのは本意ではないけれど、律も恩師の身内相手では強く拒めないのかもしれない。彼の妻としてではなく看護師として注意するのなら、角も立たないはずだ。

「申し訳ありません。ここは入院病棟ですので、お静かに願います」

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