ハイヒールの魔法
「今までの私は出会いに消極的で、本当は結婚はしたいけどそれを隠して生きてきたの。だからこんなふうになるとは思わなくて驚いてる」
「なるほど。俺は逆に出会いに積極的だったのに、上手くいかなくてイライラしてた。実は土曜日も合コンの後だったから、かなり不機嫌だったんだよ」

 出会った時にはそんなことは言っていなかった。だがあの時の苛立った様子を思い出せば、自然と腑に落ちる。

「そんな時にヒールをぶつけちゃったんだ。それは怒るよね。ごめんなさい」
「全然。そのおかげで瀬名に出会えたからね。あの時あの場所で合コンがあったことを感謝してるよ」

まるで二人を引き合わすかのように飛んでいったハイヒール。たまたま徹平の元に飛んでいくなんて、あまりにもタイミングが良すぎる。

 まるで奇跡が起きたかのように二人を繋いだハイヒールには、何か魔法がかかっていたに違いない。

「あのハイヒール、一生大切にしないと」
「あはは! 足を向けて寝られないね」
「履くのも申し訳ないくらい」
「でもまた履いてほしいな。二人を繋いだ大事な靴だしね、見るたびに拝んじゃないそうだ」

 二人はクスクス笑い合うと、手を繋いでうどん屋まで歩いて行く。

「今日の瀬名、この間とはまた違った印象で可愛いね」
「……あ、ありがとうございます。徹平さんのスーツ姿も素敵ですよ」

 こんなに直球で、心臓がもつかしら──でもこのドキドキこそが、恋なのだと実感する。

 今まで悲しい出来事ばかり続いていた二人に、壊れたハイヒールがかけてくれた特別な魔法。

 それは荒んでいた心をあたたかく包み込み、ずっと求めていた優しい愛で満たしてくれる相手と出会うきっかけを与えてくれた。

 運命のような偶然の出会いを育んでいくのは自分たち次第──この時間が、このドキドキがずっと続いくことを、瀬名は心の底から願った。
< 28 / 28 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜

総文字数/92,712

恋愛(純愛)97ページ

第8回ベリーズカフェ恋愛小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
友人・祥子の恋人が事故にあったと 連絡が来た日のこと 病院に駆けつけた愛梨は 高校時代の友人・楓介と再会する 彼は祥子の恋人・光一の友人で 彼が留学をしてからは 一度も会うことはなかった 病院で別れた二人は 数日後、思いがけない場所再び出会う 佐津川愛梨(26) × 津山楓介(26) ただの友達の恋人の友達だった二人が ある日を境に動き出す──
表紙を見る 表紙を閉じる
1話だけ大賞に応募するための作品となります。 今は1話だけですが、今後続きを追加していく予定です。 *** 高校三年生の時に好きになった人がいた 赴任したばかりの先生は どこか冷たい感じのする人 彼は高校の卒業生で 文芸部に所属していたらしい だから文芸部員の私の前では 時々笑顔も見せてくれた でも先生には恋人がいる 想いを伝えられないまま 卒業式でこう言い残した 『大人になったら会いにいっていいですか?』 あれから五年── 私は先生に会いに行くことは出来ずにいた そんな時に再会した恩師によって 運命の歯車が再び回りはじめる── 永里 莉珠(23)求職中 × 都築 隼人(28)高校教師・兼業作家 あの時にしまいこんだ想いの蕾が 新しい想いと共にふくらみはじめる──
表紙を見る 表紙を閉じる
始まりは高校三年生の時 廃部寸前の文芸部に 突然やってきたのは 学年一の優等生のあなた 住む世界が違う私たち だけど読書と顧問の先生が 二人の想いを繋いでいく あの日が訪れるまでは── すれ違ったまま卒業した二人 二人が再会したのは 恩師である顧問の先生の葬儀の日だった 山之内 花梨(26)絵本作家 × 菱川 北斗(26)外科医 会いたくないと 逃げようとする花梨 きちんと話をしようと 追いかける北斗 二人の想いが交差した時 再び恋が動き始める── *大好きな作家友だちのオガタカイさまのイラストに感化されて執筆しました♡ *エブリスタにも投稿しています。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop