Existence *
寝室の扉が開いてるそこに顔を出すと背中を向けている美咲の姿が目に入る。


「…美咲?」


俺の声で美咲の身体が微かに揺れ、ゆっくりと俺に視線が向く。


「え?うん?…何?」


不審に動く美咲の手には何かある。

だけど、それが何かまでは分からない。

暗くて…


「電気もつけねぇでどした?」

「ううん。ちょっと学校の事で気になる事があって手帳見てただけ」


笑みを浮かべてくる美咲はそう言って持っていた手帳を鞄の中に仕舞う。

あぁ、手帳か。


「学校?」

「うん」

「またなんかあった?」

「ううん。大丈夫」

「そう…」


小さく呟き、その場を離れて再び俺はソファーに腰を下ろす。

だけどそんな美咲の小さな異変に気付いたのはその日の寝る前だった。


それまでは普通だった。

普通と言うかいつも通り。


「…美咲?」

「…っ、」


洗面台に手を付けて俯く美咲の肩に触れると、美咲は驚くように振り返った。


「あ、ごめん。…どした?」

「ううん」


慌てて首を振る美咲の額に自分の手を滑らす。

熱は、ない。


「しんどそうだけど」


美咲の額から手を離し、手の甲で美咲の頬を触る。

火照ってるわけでも、ない。


「大丈夫」


そう言って微笑んだ美咲の頬から手を離し、「…寝るね」そう言った美咲は俺をすり抜けていった。

大丈夫って、その言葉聞き飽きたわ。


大丈夫じゃない時、いつも笑ってそう言うところ、ほんと何も変わってねぇわ。

しんどいって言ったら俺を不安にさせっから言わない所は相変わらず。


結局、昼間寝すぎたせいで寝れなくなってしまった俺は再びパソコンを開け、そこに溢れて来る文字に視線を送ってた。

だけど美咲の事が気になってそっちに意識が向く。


次の日も1日中そんな事を考えてたけど、帰宅した美咲は何もなかったように普通だった。


…俺の考えすぎか。
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