Existence *
「私、美咲センセ―みたいにサバサバしてる女の人好きなんです」

「あれはサバサバしすぎだろ。でも、そこがいいのかな。…なぁ、美咲は学校で頑張ってんの?」

「はい。いつも気にかけてくれるし。美咲センセ―ってほんと綺麗ですね」

「だろ?」

「よっぽど好きなんですね、センセ―の事。でもなんか分かる気するなー、私が男だったらきっとセンセ―と付き合ってると思う」

「あぁ、ごめん。取らないでくれる?」

「どうしよっかなぁー…」


クスクス笑う女の子に俺も頬を緩ませる。

でも、その女の子の笑みも一瞬で消え、女の子は表情を崩した。


「何があったのかは知らねぇけど、美咲に相談しな。今から送るから」

「でも…」

「ここに居られちゃ俺、帰れねぇから」

「すみません。帰ってもらっても――…」

「いや、普通に帰れねぇから。ここに居ちゃ俺も心配するから。ちょっと電話するから待ってて」


タバコの火を消し、一旦その場を離れる。

スマホを手にしたのにも関わらず、一瞬掛けるのを躊躇ってしまった。

あれ以来、美咲とは会う事も話すこともなかった。

その所為で掛ける事を躊躇する。

しかもこんな真夜中の時間。


だけど、あの子を放置するわけにもいかず――…

コールする着信音が数秒して途切れた時、


「…もしもしっ、」


慌てた様に美咲の声が電話口から聞こえた。


「…美咲?…俺、」

「…翔?」


小さく呟かれた俺の名前。

それだけで何故か安堵する自分が居る。


元気?その言葉を押し殺して、俺は聞こえないように息を吐き出した。


「悪い。こんな時間に…」

「どう…したの?」


戸惑うような声。

そりゃそうだ。

こんな時間に掛けてるんだから戸惑うに決まってる。


久しぶりに聞く美咲の声。

あれからお前はどうしてた?

俺はあの日に流した美咲の涙が忘れられずに居た――…
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