Existence *
「ヤッホー、久しぶりってか、タバコ咥えたまま出てこないでよ!危ないでしょ!」


目の前の優香は広がった煙を手で追い払い顔を顰める。


「は?お前、なんで居んの?」

「何でって翔に会いたいから来たの」


そう言って俺の横をすり抜けてズカズカと中へ入って行く。


「おい。つか急にくんなよ」


優香の背中に向かって、俺はため息交じりに声を吐き出した。


「別にいいじゃん。彼女の仕事行ってる時間だから全然いいじゃない」

「……」


そこに触れられたら何も言えなくなる。

顔を顰めてソファー前の灰皿に灰を落とし、俺は腰を下ろす。


「ちょーっと、なによこれ!」


優香の弾けた声に視線を向ける。

顔を顰めたままダイニングテーブルにある酒の缶と瓶を搔き集めていた。


「アンタ!なにこれ?」

「うん?」

「飲みすぎ。また夜の仕事始めてんの?」

「してねぇよ」

「ビールの缶にウイスキーの空き瓶。溢れそうなタバコの吸い殻。アンタ何やってんの?」

「……」

「ねぇ、聞いてんの?」


表情を崩して、そして怒って問い詰める優香から視線を逸らし、俺は指に挟んでいたタバコを咥えた。


「つかお前、何しに来た?」

「だから会いたかったからって言ったでしょ?もう半年以上も会ってないしさ」

「……」

「ここ来る前にママとお墓に行ってきたのよ。じゃあまだ線香に火が点いてたからアンタかなぁって思って。だからママに送ってもらったの」

「そう」

「で、こんな飲んでたらまたママに怒られると思うけど」

「最近会ってねぇからバレねぇし。むしろ怒られる年齢でもない」

「そう言う意味で言ってんじゃないわよ。アンタの身体が心配でって意味。アンタお酒辞めたんじゃなったの?」

「辞めてねぇし」

「これ何日分なの?まさか一日分?違うよね?いつからの分が溜まってんの?」


空き瓶と缶を片付けながら優香は口を開いていく。

そんな声を無視して俺はタバコの火を消して、ソファーに倒れ込んだ。
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