Existence *
まず、こんなに部屋に引きこもりになることなど今までなかった。

何もやる気がない。と言うよりも、何もせずに出てくる咳がうっとおしく、薬を飲んだところで治まることなどなかった。


その夕方。


聞こえるインターフォンの音に気付きながらも、俺は無視してシーツに包まる。

だけどコンコンと叩くドアの音。

もうその時点で、目の前に誰かが来てるって事が分かった。


誰かって言うのはここまで来れる人物で、


「また流星かよ…」


思わず心の声が漏れてしまう。

何度も鳴るインターフォンの音に、頭まで被っていたシーツをはぎ取り、玄関に向かった。


「…なに?」


玄関の扉を開けてすぐ目に入ったのは、顔を顰める沙世さんで。

やっぱりな。と思いため息が出てしまった。


「何って、こっちが何って聞きたいわよ」

「別に来なくていい」


ビニール袋を提げた沙世さんは不満そうな表情で、中へと入って行く。


「どーせ翔くんは言わないだろうって、流星君が教えてくれたのよ」


買ってきた物を袋から出しながら俺に視線を向ける。

その視線を交わし、俺はソファーに寝転んだ。


「別に…んな事、教えるほどでもねぇよ」

「教えてもらわなきゃ困るよ。ほんと、アナタは何をしてるの?あの時からずっと言ってたでしょ?気を付けてねって、」

「……」

「そんなに飲んで、お酒で何を解決しようとしてるの?一番やっちゃいけない事でしょ?」

「……」

「ねぇ、翔くん聞いてるの?」

「あぁ」

「何があったのかは知らないけど、お酒で解決できることなんて何もない。そんな事、自分でも分かってるでしょ?」

「……」

「流星君が美咲ちゃんとは喧嘩中とかなんとか言ってたけど、それでお酒ってどうなのよ」

「……」

「美咲ちゃんの事、心配させちゃ駄目だよ。入院の事ちゃんと言ってんの?」

「……」

「ねぇ、翔くん?」


ほんっとに、どいつもこいつも美咲、美咲って、うっせぇわ。

確かに美咲の事で酒を飲んだのは事実。

一日でも早く忘れようって思ってんのに、周りの所為で忘れるのも忘れられない。


ほんっと、うっとおしい。
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