Existence *
蓮斗の事務所でシャワーを浴び、再び車に戻る。


「実香子に電話しといた」

「うん」

「実香子さぁ、すげぇ心配してたよ?ほんとは今日19時上がりだったんだと。帰り際にお前に言って帰ろうと思ったらお前が居なくて、探したけど見つからないから夜勤の人と代わってもらったって」

「……」

「お前の所為で実香子、労働基準法さらに越えてんじゃねぇかよ」

「……」

「まじで謝っとけよ」

「……」

「ユウトに電話かけてさ、1時間何の連絡もないからって実香子が泣きながら俺に電話してきた」

「……」

「アイツがあんだけ怒るって、お前の為でもあるし実香子の為でもあるからだろ?」

「……」

「そりゃあ、アイツも怒るわ。俺でも怒るわ」

「……」

「アイツ、実香子とより戻したって。だから尚更怒ってんの」


そう言った蓮斗に思わず視線を向ける。

その俺の視線に蓮斗は笑みを浮かべた。


「…そっか」


別にあまり衝撃的でもなく、驚きもしなかった。

そうなるんじゃないかなって、前からずっと思ってたから。


「実香子がより戻れたのは翔のお陰って言ってた」

「俺なんもしてねぇわ…」

「そこは分かんねぇけど、実香子がそう言ってた」

「……」

「お前がなんで美咲ちゃんと別れたとか俺には関係ねぇし、お前らの恋愛に興味ねぇから聞かねぇけど、酒では解決できん」

「……」

「そんな事、お前が良く一番分かってんだろうが。夜の仕事してて酒で解決出来た事今まであんのかよ?」

「……」

「ねぇだろ、んな事。ちょっと、お前すこし頭冷やせ」


蓮斗の言ったことは正しかった。

酒で忘れられる事なんか今まで一度もなかった。

だけど、そうでもしないと美咲が俺の中から消えてはくれない。


思い出すだけで、しんどくなる。

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