この命のすべてで、君を想いたい
『……ねえ、空』

空が顔を上げる。その表情に優しさが広がるのを見て、
逆に胸が締め付けられた。






『今日、夕日きれいじゃないかな。屋上、行かない?』




空は一瞬だけ、ほんの一瞬だけまばたきの間が伸びた。



それが全部答えだった。

いい話じゃないことなんて、分かりきってた。


でも相当良くない話だったんだと実感する。



雫は明るく笑うようにして続ける。




『ほら、今日は天気がいいし、夕日くらい見ないと損じゃん』



軽く言ったつもりなのに、声が少し震えた。



でも空は何も言わず、ただ優しく頷いて、車椅子のブレーキを外した。



その仕草に、胸がじんと熱くなる。



何があったのかはまだ聞かない。
でも――空の顔を見た瞬間に、もうわかってしまっていた。




だからこそ、せめて今だけは、二人で同じ夕日を見たい。




雫は窓の外に沈みかけた光を見ながら、




そっと空に手を伸ばした。





『行こ、空』

空はその手をやさしく握り返してくれた。



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