この命のすべてで、君を想いたい
泣いていたあの子(空side)
雨の音が波の音に混ざる海辺を、空はゆっくり歩いていた。
放課後の帰り道、ただぼんやり海を眺めたくて寄っただけだった。
けれど、視線の先に小さく座り込む女の子が見えた。
傘もささずに濡れている。
その横顔は、泣いているようだった。
「泣いてんの?」
思わず声をかけ、持っていた青空柄の傘を差し出す。
彼女は少し驚いたように顔を上げたか、声は出さない。
彼女は声も出さずに泣いていた。
『雨嫌いなんでしょ』
『なんか寂しくなるよね』
知ったような口を聞いてみたが、彼女は何も答えない。ただ綺麗な顔で泣いているだけだった。
頬を伝う大きな水滴は
涙なのか、雨なのか区別がつかない。
『いいよ、俺帰るだけだし』
自分が持っていた傘を手渡すと、彼女は少し戸惑いながらもその手を握った。
──なんで泣いてたんだろ。
あのあと、ちゃんと帰れたのか。
あの子は誰なんだろう。
そんなことをぐるぐる考えながら、家に帰るまで何度もあの子と渡した傘を思い出し、頭から離れなかった。