さくらびと。【長編ver.完結】


医学生の忙しさにも慣れてきた冬の終わりのある日、裕紀は決心した。


もう彼女と出会ってから一年以上が過ぎていた。

美桜の傷も少しずつ癒えてきたように見えた。


いや、彼女は自分の力で立ち上がり、前を向いて歩き始めていた。




「美桜、話があるんだ。」





卒業論文に追われている美桜をゆっくりと連れ出し、高台の公園に向かった。


まだ寒い季節だが、遠くに見える桜の枝には小さな蕾が見えていた。






「どうしたの?改まって。」








彼女は首を傾げながらも嬉しそうに裕紀の隣に立った。



「君と出会ってから……時間が経つのがあっという間だった。」



裕紀は空を見上げながら話し始めた。彼女の笑顔、泣き顔、怒った顔。すべての表情が大切だった。




「美桜が辛いときに一緒にいられて良かったって思う。これからもずっと、君の隣にいたい。」


「え……。」





「"僕の家族になってくれませんか?"」





小さな箱を取り出して開けると、シンプルな銀の指輪が月明かりに輝いていた。美桜はしばらくの間固まっていたが、やがてその大きな瞳から涙があふれ出した。



「本当……?夢じゃないよね?」



彼女の手が震えているのがわかる。裕紀はそっとその手を取った。






「本当だよ。一生、美桜を守るから。」

「……嬉しい。」





彼女は鼻をすすりながら指輪を受け取り、左手の薬指に嵌めた。その瞬間、裕紀は確信した。この人となら、どんな未来も乗り越えていけると。




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