花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
 妻の美砂子《みさこ》は、瀟洒なアイランドキッチンにて慣れた手つきで珈琲を淹れる夫を振り向きざまに見、それから手元の雑誌へと目を戻す。夫である光則のインタビューが掲載された雑誌。思う存分事業に力を入れる夫を支える一方で美砂子は夫のインタビューに一通り目を通すとテーブルに雑誌を置き、それからもう一つの雑誌へと目をやる。娘の恋乃が表紙の雑誌。

 出来ることなら手元で育てたかった。恋生の双子の片割れである池水恋乃を手放したことをいまだ美砂子は悔いている。もし、京都の実家になどやらなければ、あんな痛ましい事件に巻き込まれることなどなかったかもしれない。何度考えても美砂子は同じ思考に至る。

 だが恋乃は障害をものともせず一流のビジネスパーソンと活躍し、雑誌の表紙をかざるくらいである。美砂子の目に、その姿が眩しくも痛ましくも映る。

 長男は既に神宮寺財閥を拡大すべく、戦後はかつて互いにしのぎを削った、いわばライバル企業の娘と結婚し、三人の子を授かっている。孫は男の子が二人、女の子がひとり。女孫のほうが勝ち気な性格で男の子たちはたじたじだという。
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