花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
「ありがとー」と緑川弁のイントネーションで返す流儀。「ほしたら、またな。お母さん」

 律儀な母は、菓子折りと共に早速翌日送ってきた。

「――見つけた」

 恋生。あなたのいる写真が残っているよ。

 それは、能登で行われた、ある宗教の泊まりの合宿での集合写真。私と離れたところに、あなたがいた。

 ただし、印象はかなり違う。目深に帽子をかぶって、チャームポイントのうす茶色い目もそのつややかな髪も見せずまるで世間を拒絶しているかのような。みんな笑顔でピースをしているのにあなただけ……そっぽを向いて。

「私、あなたに出会っていたんだ。……恋生」

 他に写真がない。集合写真のたった一枚のみ。いや違う。この帽子……グリーンの帽子を被った男の子はあなたひとりで、他の写真に二枚だけあなたがいるけれど、帽子で顔を隠していて。こういう……写真を後から見返されることを想定して? まさか。そこまでする?

 そもそもこの男の子。神宮寺恋生なんて名乗っていない。違う名前……。

 顔が分からないことに苛々する。せめて、顔とか声とか分かればなにか思い出せそうなのに。
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