花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
 いいや。そんなことよりも朝出社したら真っ先になにをする。メールチェック。関係のない百件以上のメールや通知に目を通し、即座に完了フォルダに放り込む。見ておかないと困る内容もあるし、他チームのことだから関係ないとそう簡単に割り切れるものでもない。仕事と仕事は必ず繋がっていて、循環し、どこでどうかち合うか分からないから。
 こんな毎日を続けてなんになる。兵隊の一部となって、私の生産性とか、人権というものはどこに消えるのか。しゃぼん玉となって弾けた。そう。私の存在価値なんてその程度のもの。目的地に着くと雪崩のように降りる群衆に混ざり、押しつぶされ流される流れに従い、必死に、ショルダーバッグを固く握り、防御に回る。この世は常に戦いだ。ああ、息が詰まる。

「言いましたよね。……私、夜間バッジが回るまでデータは寝かせてくださいって」
 しんとしたタイピング音の鳴るオフィスに、尖った声が響く。注目を集めているのは分かるがどうにもならない。
 この男の、無駄に謙遜して、実力がないことをいいわけに、言い逃れをするところが大嫌いなのだ。
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