花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
「なんで先にやっちゃうんですか。……これ、今日またやって、明日にならないと処理が進められないじゃないですか。二日遅延するんですよ?」
「まぁまぁ川瀬くん、そう尖らずに」
 リーダーは業務をやっているわけではないから、呑気にそんなことが言えるのだ。
「……もういいです。片岡さんは試験項目203から始めてください。昨日ミスしたのは私がやります」
 こうして仕事がどんどん積みあがっていく。ピラミッドのように、終わりが見えない。

 うっかり仕事に集中しているとまともにトイレすら行けない。お化粧直しなんてもってのほか。
 ビル内だから安価に買える自動販売機でカフェインを注入しているときだった。
「まったくな、三途の花はこれだから困るんだよな」
 片岡。違う、この声は……。
 給湯室の影に身を隠す。自分の素早さが呪わしかった。
「花っていうか、棘しかねえじゃんあいつ」
 あいつ。たかが、プロパーでもない、こうして立派に国立理系の四大を卒業して正社員として就職した私を、半分の給与しか貰っていない、孫請け企業勤めのパートナーさんごときがそれを言う。
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