花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
「酷な質問をなさるのね」と彼女は笑った。「いつから? 気づかれていたのかしら?」

「手紙を取り出したときに確信しました。……手紙の送り主は、本当は、理生です。あなたの正体は神宮寺恋乃なので、恋乃のアナグラムである理生を名乗るほうが自然です」

「そう。……気づかれないことも多いのに、軽率でしたわ」

「いえ。試したのはこちらです。試すような真似をして申し訳ありません」

「いいのよ。恋生がどんな相手を選んだのかが知れて……よかったわ。また会うこともあるでしょう。では、お元気で」

 立ち上がった恋乃の動きはとても自然だった。身のこなしといい、視覚障害者とはとても思えない。全盲なのか、弱視なのかすら判断出来ないほどだ。もしかしたら弱視という可能性もあるが。

 彼女の秘書に見送られ、私はビルを出た。小雨が降っていた。折り畳み傘をケースから取り出し、歩き出す。

 恋乃が視力を失ったきっかけまでは分からなかった。だが、あんなにも、大人への復讐を企て、試みるほどには、徹底的になにかを憎んでいる。
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