弟たちは、恋のキューピッド
2章 揺れる心
弟が見抜く顔
「みなとくん、みなとくん、またくる?」
翌朝、朝食の席で琉久がパンをかじりながら、何度も湊の名前を口にした。
「昨日、いっぱい遊んでもらったもんね」
莉瀬は笑いながら、琉久の口元を拭いてあげる。
「またくる?またくる?またくるの!」
琉久は椅子の上でぴょんぴょん跳ねて、繰り返す。
玲央は牛乳を飲みながら、ぼそっと言った。
「…あいつ、ほんとに琉久に好かれてんな」
「うん。湊くん、優しいしね」
莉瀬はスマホを手に取り、ふと湊の連絡先を開いた。
少しだけ迷ってから、メッセージを打つ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
琉久が「また来て」って言ってるよ。
よかったら、今週末も遊びに来る?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
送信ボタンを押したあと、莉瀬は少しだけ胸が高鳴るのを感じた。
それが“嬉しさ”なのか、“期待”なのか、自分でもよくわからなかった。
数分後、湊から返信が届いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もちろん!僕もまた会いたいな。
琉久くんにも、莉瀬ちゃんにも。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その最後の一文に、莉瀬は一瞬手を止めた。
“莉瀬ちゃんにも”—— なんだか、少しだけ胸が熱くなる。
週末。
湊はまた紙袋を持ってやってきた。
中には、琉久の好きなキャラクターのぬいぐるみと、玲央へのギター用のピック。
「また来てくれてありがと~!」
琉久は湊に飛びついて、ぎゅっと抱きついた。
「うわっ、琉久くん、元気だね」
湊は笑いながら、琉久を抱き上げた。
「ちょっと待っててね。お茶淹れてくるから」
莉瀬は立ち上がって、キッチンへ向かった。
湊と玲央は、リビングにふたりきりになった。
琉久は床に座って、ぬいぐるみを並べて遊んでいる。
その静かな空気の中で、玲央がぽつりと言った。
「…おまえさ、ねーちゃんのこと好きだろ」
湊は、思わず手に持っていたクッションをぎゅっと握った。
「え…」
「見てりゃわかる。目、ぜんぜん違うし。…琉久に接してるときと、ねーちゃんに話してるとき」
玲央はスマホをいじりながら、まるで天気の話でもしてるかのような口調だった。
湊はしばらく黙っていた。
でも、心の中で何度も繰り返していた言葉が、ついに口からこぼれた。
「…好きだよ。莉瀬ちゃんのこと」
玲央は、スマホの画面から目を離さずに「ふーん」とだけ言った。
まるで興味がないような、淡々とした返事。
湊は少しだけ肩を落とした。
でもそのとき、キッチンから莉瀬の足音が聞こえてきて、ふたりは何事もなかったように姿勢を整えた。
「お待たせ~。紅茶でよかった?」
莉瀬が湯気の立つカップを運んできて、湊の前に置いた。
「ありがとう」
湊は笑って受け取ったけれど、さっきの会話が頭から離れなかった。
そのとき、玲央がそっと湊の耳元に顔を近づけて、低い声でつぶやいた。
「ねーちゃんは、鈍感だから、気づかねーぞ」
湊は目を丸くした。
玲央はすぐに立ち上がって、「琉久、こっち来い。ぬいぐるみバトルしようぜ」と言って、琉久の隣に座った。
莉瀬はその様子を見て、「玲央、珍しく優しいじゃん」と笑った。
湊は、玲央の言葉を胸に刻みながら、莉瀬の横顔をそっと見つめた。
——気づいてないなら、届くように。
——少しずつでも、ちゃんと“好き”って伝えていこう。
春の午後、静かに、でも確かに、湊の想いは動き始めた。
翌朝、朝食の席で琉久がパンをかじりながら、何度も湊の名前を口にした。
「昨日、いっぱい遊んでもらったもんね」
莉瀬は笑いながら、琉久の口元を拭いてあげる。
「またくる?またくる?またくるの!」
琉久は椅子の上でぴょんぴょん跳ねて、繰り返す。
玲央は牛乳を飲みながら、ぼそっと言った。
「…あいつ、ほんとに琉久に好かれてんな」
「うん。湊くん、優しいしね」
莉瀬はスマホを手に取り、ふと湊の連絡先を開いた。
少しだけ迷ってから、メッセージを打つ。
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琉久が「また来て」って言ってるよ。
よかったら、今週末も遊びに来る?
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送信ボタンを押したあと、莉瀬は少しだけ胸が高鳴るのを感じた。
それが“嬉しさ”なのか、“期待”なのか、自分でもよくわからなかった。
数分後、湊から返信が届いた。
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もちろん!僕もまた会いたいな。
琉久くんにも、莉瀬ちゃんにも。
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その最後の一文に、莉瀬は一瞬手を止めた。
“莉瀬ちゃんにも”—— なんだか、少しだけ胸が熱くなる。
週末。
湊はまた紙袋を持ってやってきた。
中には、琉久の好きなキャラクターのぬいぐるみと、玲央へのギター用のピック。
「また来てくれてありがと~!」
琉久は湊に飛びついて、ぎゅっと抱きついた。
「うわっ、琉久くん、元気だね」
湊は笑いながら、琉久を抱き上げた。
「ちょっと待っててね。お茶淹れてくるから」
莉瀬は立ち上がって、キッチンへ向かった。
湊と玲央は、リビングにふたりきりになった。
琉久は床に座って、ぬいぐるみを並べて遊んでいる。
その静かな空気の中で、玲央がぽつりと言った。
「…おまえさ、ねーちゃんのこと好きだろ」
湊は、思わず手に持っていたクッションをぎゅっと握った。
「え…」
「見てりゃわかる。目、ぜんぜん違うし。…琉久に接してるときと、ねーちゃんに話してるとき」
玲央はスマホをいじりながら、まるで天気の話でもしてるかのような口調だった。
湊はしばらく黙っていた。
でも、心の中で何度も繰り返していた言葉が、ついに口からこぼれた。
「…好きだよ。莉瀬ちゃんのこと」
玲央は、スマホの画面から目を離さずに「ふーん」とだけ言った。
まるで興味がないような、淡々とした返事。
湊は少しだけ肩を落とした。
でもそのとき、キッチンから莉瀬の足音が聞こえてきて、ふたりは何事もなかったように姿勢を整えた。
「お待たせ~。紅茶でよかった?」
莉瀬が湯気の立つカップを運んできて、湊の前に置いた。
「ありがとう」
湊は笑って受け取ったけれど、さっきの会話が頭から離れなかった。
そのとき、玲央がそっと湊の耳元に顔を近づけて、低い声でつぶやいた。
「ねーちゃんは、鈍感だから、気づかねーぞ」
湊は目を丸くした。
玲央はすぐに立ち上がって、「琉久、こっち来い。ぬいぐるみバトルしようぜ」と言って、琉久の隣に座った。
莉瀬はその様子を見て、「玲央、珍しく優しいじゃん」と笑った。
湊は、玲央の言葉を胸に刻みながら、莉瀬の横顔をそっと見つめた。
——気づいてないなら、届くように。
——少しずつでも、ちゃんと“好き”って伝えていこう。
春の午後、静かに、でも確かに、湊の想いは動き始めた。